レビュー

レビュー:沙耶の唄、それは冒涜的なクトルゥフ物語

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さんたろうはホラー大好きマンです。

恐怖のブギーマンが暴れ回って傍若無人を尽くす様は気分がスカっとします。
目の前の不条理に知恵と勇気で闘う主人公達に力を貰えます。
生還した、しかしビターな結末のもたらす寂しさに心動かされます。

しかぁし!

結局一番怖いのは怪人よりも  「人間」 だよ‥

みたいな展開、きらい
そんなこと知ってるし、そりゃそうだろうし、
でもさ、お前本当にブギーマン、もしくは野生動物を目の前にして同じ事云えんの?
300kgのクマが突っ込んできて同じこと云えんの?

!!いえねーよ!!
熊VS僕らの味方ゴリラさん‥こえええ‥

アメリカドラマなんかではそれが顕著で、例えばゾンビまみれのウォーキングデット結局人間同士の縄張り争いになっちゃう。
自然は征服すべきもの、しうるもの、という欧米人の本質が底にあるのかもしれません。
「脅威」に対する尊厳というか、畏怖が足りないように僕は思います。

その点貞子はエライよ、最後までしっかり怖い、しかも出会っただけであの世逝く

さて、今回はクトゥルフ神話(創作)をベースにして作られた作品のノベルゲーム沙耶の唄のレビューです。

沙耶の歌にも使われるクトルゥフ神話体系って

クトルゥフ神話(リンク:初心者でもよく分かるクトゥルフ神話入門編)とは、←のページを観てもピンとこないかもなので紹介します。
アメリカでラブクラフトが創作した怪奇小説「ダゴン」を元に様々な作家によって磨かれた物語体系です。

体系っていうのは、アベンジャーズや昭和仮面ライダー、ウルトラマンみたく同じ世界をベースにして描かれた物語のことを指します。
クトルゥーやニャルラホテプなんかは他の作家、作品でも登場します。
物語で現れる異形の神々は魅力的で想像力を掻き立てられます。

人類世界のルーツ、そして現存の人類文明に影響を与えている
人知を超えた力を持っている、それゆえに人間を軽くみている
異形の存在で目にするだけで怖気が走り最悪命を失う
魔法や秘術で召喚する。でもその正体は宇宙からやってきたり別次元からやってきたりする

人知を超えた力、それは一個人の力ではなんとかなるレベルを超えていて、恐怖の対象で有り続ける
そしてそのルーツはSFチックで、人類の起源もあったりして僕の大好物です。

ていうか貞子なんかはモロにクトルゥフ的存在、見るだけで命を失うし対策もできない。
鈴木光司氏のリングで伝えたかったものと映画リングがもたらす感想は違うもののような気がしますが
絶対的な恐怖、召還の方法、都市伝説、そのルーツ、とってもクトルゥフ的です。

で、今回紹介する沙耶の唄クトルゥフ神話体系をふんだんに盛り込まれて描かれています。

沙耶の歌のあらすじ

悲惨な事故にあい、家族を失うも生還した医大生の郁紀(フミノリ)
彼は元の生活に戻るも医者には隠している疾患を抱えていた
それは見るモノ全てを醜悪でグロテスクな存在と捉えてしまうという疾患。
人間はおぞましい肉塊に見え、話す言葉は呻き声や金切り声に聞こえ、触れた感触ですら尋常ではなくなっていた。
そんな中、病院で出会った一人の少女沙耶だけは狂気からかけ離れた美しい人間として認識することができた。

そんな沙耶とフミノリは共同生活を始める‥

という内容、このゲーム、成人指定のゲームです。
工口ゲーってことでそういうシーンもあります。
そっちよりも主人公フミノリが見る世界のおぞましさが容赦ないです‥リンクは張りません自己責任でググッてください。

そして通常のものがグロテスクに見える彼にとって美少女に見える沙耶は普通の人にとってどう見えるのか?
推して知るべし‥

沙耶の歌はAndroid版がオススメ

沙耶の歌、ずーっとプレイしてみたい、という思いがありましたが手が出ませんでした。超えるべき障害として
工口ゲーである
グロゲーである
それ以上に古い(2000年代)のPCゲームであり環境が整えられない
なんてことがありました。
今はAndroid版があって2000円でダウンロードできます。
原作をプレイしてないのでなんとも言えませんが描写はけしてまろやかではありません。
セールの時を狙えば1000円で手に入る模様‥

しかも年齢認証も甘い、いやぁ、飽食の時代ですな!

認知の歪み、沙耶の歌はその中でみつけた恋という暖かさの物語

あらすじでも書きましたが大学にフミノリは復学しますが寝ても覚めてもグログロな視界なので人間に心を開けません。
スキー旅行に行った学友たちもおぞましい声をあげ、鼻をつんざく悪臭を放つクリーチャーとして見えます。

僕自身うつを患っていますがよく喋る女性は今でも怪音波をあげるコンクリートの塊に見えます。
認知の歪みってやつですね。これが抑うつをもたらす‥

多分、これを是正しない限り、恋愛はできない、そう感じています。
女性の友人にオンナを感じると嫌悪感が走ります。

こういった認知の歪みは見た目からは解りません。
人とズレた感覚だと思っています。
いっそのこと、それが見た目でも解る、沙耶のようなバケモノのような容姿ならばいいのに‥そう思うこともあります。

といってもこういったことって誰しもあることだと思う。
怒鳴っている男が獣に見えたり
忙しくされると地獄のような苦しみを感じたり
そういうことって誰しもあると思うんだ。

沙耶の唄ではそんな認知の歪みを抱えた主人公がその中で美少女に見える沙耶に暖かさを感じ、恋をする物語です。

こっからは本格的にネタバレしてきます。

沙耶の唄のクトルゥフ世界感を思わせる3つ結末

ゲームですので沙耶の唄にはエンディングが3つあります。
選択肢は3つ、どれも簡単に見られます。

どの結末も誰かが狂気の世界にひとりぼっちになる、というもの。
病院エンドでは沙耶が狂気の世界に残されます。
悪夢エンドではヒロフミの友人であり唯一の生還者の耕司が狂気の世界に残されます。
おそらくオーソドックスな結末の羽化エンドではヒロフミが、おそらく世界に残されます。

エンディングそれぞれに感想書いてきます。

【病院エンド】本当に、沙耶はヒロフミのことが好きだったんだ

物語の中盤、沙耶はヒロフミの認知の歪みを治すべく研究を始める。
かいつまんで云うと脳と身体がおかしくなっている。
そのために沙耶は「実験」をする。
ヒロフミの隣人の中年男を「改造」してヒロフミと同じ状態にしてしまう。
そしてもたらせられる被害‥ヒロフミに直接的に関わりのある人物が首突っ込んで犠牲になるのはしょうがないとしても‥
関わりの薄い隣人に降りかかる被害は筆舌にしがたいもので、

沙耶が本当に人間でない、人間の命を軽く見ている

そのことがビビットに描かれます。

‥こいつはやはりバケモノだ‥

沙耶はヒロフミに提案をする。
もとの世界に、戻りたい?
キミのためならどこまでもいける
 戻りたい

そして沙耶の力を借りて元に戻ったヒロフミは隔離病棟に閉じ込められます。
‥いつまでも沙耶を待ちながら‥
ドア越しで沙耶とヒロフミのやりとりは、たしかに、彼女はヒロフミを利用していたわけでなくたしかに愛していたのだ、それを感じさせるものでした。

【悪夢エンド】クトルゥフ体系を思わせる、狂気の中で

キミのためならどこまでもいける、と決断したヒロフミ沙耶とますますエスカレートしてゆく。
友人の耕司は彼女と女友達がヒロフミと関わって行方不明になった
ということでヒロフミについて調べ回る
ヒロフミの主治医に相談、もう踏み込めば危険なレベルまできていることを忠告される
一方ヒロフミ沙耶の父親の痕跡を探る
別荘に耕司と向かうヒロフミ、枯れ井戸に耕司を落とし、これで邪魔者はいなくなった、と安堵するヒロフミ
命からがら耕司は主治医に助けられる

実は主治医には裏の顔があってバケモノバスター
仮面ライダーの怪人くらいなら倒せそうなくらいの手練れ、うーんゲームですな!
冒涜的バケモノに関する対処方法をレクチャーしつつ、研究者である沙耶の父親の研究を曝く

明かされる沙耶の正体

もう少し彼の残した研究を読み込んで対策を練る必要がある‥

一方ヒロフミの暴走を止めるべく耕司はヒロフミの元へ向かう。

ヒロフミの自宅で見た恋人の変わり果てた姿を発見する‥
作中最もショッキングなシーンです‥

‥彼はもう、人間の法律で裁ける存在でない‥

そして自分に手に負える相手ではない、そう考えた耕司は医師とヒロフミの待ち受けるアジトに向かう。

血まみれの決闘の末、生還した耕司。

しかし狂気に触れた耕司は精神が壊れる。
幻覚の医師がこう耕司に語りかける

どんなに世界が滅茶苦茶になろうと
悲鳴を上げて逃げ回る以外の選択肢が自分にはある
銃はいいよ。本当に。相手に向かってぶっ放すも良し、
いよいよ駄目ともなればヘミングウェイに倣えば良しだ

耕司は一発の弾を込めた拳銃を洗面所に隠すことで辛うじて精神を保っている。
いつでも、ヘミングウェイに倣えるように‥

狂気の中に一人残された耕司
まさにクトルゥフ体系を描いたような、SAN値直送!後味の悪いものになっています。

【羽化エンド】沙耶にヒロフミはどう見えてたのだろうか?

‥彼はもう、人間の法律で裁ける存在ではない‥
そう考えた耕司は単独ヒロフミと沙耶に決闘を申し込む。

で、負けちゃう。

勝利を収めた沙耶とヒロフミ、これからも、逃げるように生きていこう。
そう決意した時沙耶に変化が起きる

きっとこれが私のできる、最後の贈り物

そういって沙耶は儚く、美しく散る、花が咲いて、花粉を飛ばすように

別荘にいる医師に視点はうつる。
彼女は沙耶の父の研究を編纂していた。
誰かに読んで貰えるように、といっても、誰もそんな人いるわけがないか‥

沙耶の研究にはこう書いてあった
言語を瞬く間にマスターしてしまった
数学に関してコンピューターさながらの演算能力をみせた
生殖、について関心をみせた、彼曰くそれは本能だと
彼は自分を女性であると認識した
彼女は女性として人格を持ち始めた
古今東西の恋いの物語を読み、彼女は心を閉ざすようになってしまった

‥まるでこの世の中には自分が残す価値のない世界と悟ったように‥

高い丘から街を見下ろす主治医
世界は沙耶の影響で変わってしまった
医師自身も身体が爛れ始めている

最後を迎えてこう思う

沙耶の心を開いたヒロフミと、もっと話をしたかったな、と
世界の終わりの荒涼感と、果たして沙耶から残されたヒロフミは何を思い、生きているのだろうか、そんなビターな結末でした。

まとめ:沙耶の唄はクトルゥフ的世界感を楽しみたいなら最高

そんな恐怖と凄惨さに溢れた物語、沙耶の唄ですが、クトルゥフ的世界感を感じたいなら最高の作品だと思います。
クトルゥフ神話の知識があるほど楽しめる物語なのでは?

この世界は、自分を残す、価値のない世界、か‥

ライターは魔法少女まどかマギカの虚淵玄です。
脚本でない彼の作品は初めて鑑賞しましたがセリフは僕の心を刺しました。
読書オタの人にとっては虚淵玄氏はパッチワーク、元ネタが明確にあるツギハギだという人もいます。
でも、確実に、彼の作るセリフは心を刺すものがある。

大手を振ってオススメできる作品ではございませんが、気になってる人は、是非。

FATEZEROもよんでみよっかなー

2019/05/04富士さんたろうがしるす

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